970412夜這いから、近代買春へ、(桜井研究所通信)
        桜井芳生        

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【主要問題】近代買春の原因はなにか?。

【主要回答案】一つには、社会の「非互酬化」による夜這いの消滅である。

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970412森栗茂一「夜這いと近代買春」(1995明石書店)の「日本の都市化は、男を夜這いから買春へとはしらせた」(オビより)という主張は、コロンブスの卵的なところもあるが、非常に啓発された。

森栗の書は事実の提示が主なので、以下は、私桜井による思考だ。

過度の単純化を承知で、強引に図式化してみよう。

社会を「前商品社会・前都市社会」と「商品社会・都市社会」とに、理念型的に二分してみよう。

で、作業仮説として、「人間の社会は、つねに、婚外交渉(婚前交渉を含む概念)を、何らかの程度必要とする」という仮説をおいてみよう。

「前商品社会」においては、この「婚外交渉」が、おもに「夜這い」(ならびにその類似物)によってなされるとかんがえてみよう。そこでの、「性交渉」は、「ある程度の、御試食・つまみ食い」は許容されるだろうが、前商品社会での「贈与・互酬」の常として、「あまりにひどい、ただ乗り・食い逃げ」は、社会的許容されないだろう。

社会的仕掛けとしての「夜這い」のミソは、「ほどほどに、非公然的だが、完全には、秘密ではない。(完全に公認ではないにしても、完全に私的でもない)」というところにあるのだろう。

これに対して、社会が「商品社会」化し、「都市」化し、人びとが、「貸し借り感情の効かない」群衆化し、「互酬」がきかなくなると、以上のような夜這いの論理では、女はたんに「ただ乗り、食い逃げ」されるだけになるだろう。

近代都市化過程における「純潔」「貞操」の強調現象は、このような理解と非常によくマッチするだろう。(すなわち、純潔・貞操の強調は、「食い逃げ」の危険性への対抗措置である)。

したがって、都市においては、女は、「一回の(婚外)交渉ごとに、代償を回収」する方が、得策となる。

これに対して、男は「買春」する(金を払う)ようになる。これが、森栗の言う「近代買春」だろう。

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