桜井芳生
sakurai.yoshio@nifty.ne.jp
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【主要命題=イイタイコト、が、なければ留年!!】
いよいよ、卒論執筆も、「追い込み」になってきた。しかし、この期に及んでも、卒業【論文】の、【結論=主要命題=イイタイコト=主要回答案】すなわち「メインアイデア」が明確になっていない人がけっこういるだろう。
いうまでもないが、【結論=主要命題=イイタイコト=主要回答案】がないものは、【論文】とはいえない。つまり【不可!】である。つまりは【留年!】である。苦労して「就職の内定」をとっても、まったくムダになってしまうよ。
三年生も「他人事だ」と思わないように。あっという間に「メインアイデア」がないうちに一年たってしまう。メインアイデアさえあれば、かなり短期間に卒論をかくことも可能だ。しかし、メインアイデアがないと、いつ終わるともしれない「生みの苦しみ」のトンネルに入ってしまうことなる。今からメインアイデアの発想を急ぐようにしよう。
【今日明日じゅうに、メインアイデア=主要命題=イイタイコトを発想する法】 というわけで、何とかインスタントに強引に、メインアイデア=主要命題を産出する「ドロナワ的ウラワザ」を考えてみた。
名付けて【テーゼピックアップ→ツッコミ法】である。
「行き詰まっている、君、」ためしてみたら?。
(これは、私が前にかいた一冊スパーク法と、小林盾氏のテトリス法を、元にしています。小林氏に感謝します。また、有馬景一郎氏とのブレストに直接は負っている。感謝します)。
【まず、「一冊だけ」本を用意する】
まず「秘密のコツ」は、本を一冊「だけ」用意する、ということである。
「卒論をかく以上は先行研究を全部読め」といわれた人も多いだろう。もちろんこれは正しい。関連する文献はできるだけ多く(全部)目を通すべきである。
しかし、また、このことが、アイデアがでない原因になっていることも多い。
人間の情報処理能力なんてたかが知れている。何冊もの文献の論旨を君一人の頭の中で十分に整理するなんてできるものではない。
そこで、多くの本のことはひとまず忘れて、自分が評価できると思える本を一冊だけ選ぶのである。
【その文献の主要命題を、一カ所だけ「引用」し、テーゼ化する】
本を一冊にしぼってもまだ「複雑性はおおきすぎる」。
そこで、その本の「イイタイコト・結論・主要命題」をピックアップしよう。
困るのは、人文科学関係では「結論」が何かわからない本が多いということだ。
ここでは、「本への忠実性」は犠牲にして、「このあたりが、もっとも、重要そうだ」という部分を、「エイヤア」と「切り取って(引用して)」しまおう。
コツは自分の言葉でまとめよう等とせずに、「強引に、一文のみを、切り取る(引用する)」ことである。
こうすれば、自分のその本に対する理解は正しいのかという「解釈の信頼性問題」がかなり改善する(すなわち、その引用文は、少なくとも、その本で主張されていること(の一つ)であるわけだ。)
たとえば、今手元に、みやだい真司氏の「見当違いの倫理主義を排斥せよ」(岩波書店『へるめす』1996年9月号)という論文がある。
これだったら、強引に15頁下段の
「そして実際、インターネット社会が直面しつつあるさまざまな問題は、10年以上に及ぶ「電話風俗」の歴史において出尽くしている。」
と、「引用」してみるわけだ。
で、その引用文だけではいまひとつわかりにくいようだったら、引用の「ほかに」、自分なりのまとめとか、その文の主要命題の「キャッチフレーズ」とかをつけてみるといい。
たとえば、例のみやだいの文なら、
(まとめ)「インターネットをめぐる諸問題は、電話風俗をめぐって出尽くしている」
(キャッチフレーズ)「インターネット=テレクラ説!」、というように。
【ここですかさず「ツッコモ」う!。「ンナ、アホな!!」と。】
で、つぎが重要だ。ここまできたら、【すかさず、つっこもう。「ソンナ、アホな!」と】
上述のみやだいの論文にたいしてだったら、
「インターネットをめぐる問題は、電話風俗で、出尽くしている??。ンナ、アホな!!」と。
われわれは、ついつい「活字」になったものに服従してしまう。しかし、卒論をかくとは、「学問(学者)に、だまされないようになる」ということだ。
そこで、「活字に服従」してしまう前に「先手をうって」、文献の主要命題に対して「ツッコミ」をいれて、「懐疑的態度」を自分にとらせてしまうわけだ。
で、具体的にどのような点が、疑問があるかは「後で考えればよい!!」。まずは、「振る舞い」として文献にのみこまれないように【ツッコミ】を一本いれておくわけだ。
【ツッコミを一本いれた「後で」、ゆっくりと「懐疑」する。「で、どこが、アホなのか」と。】
以上のように、ツッコミを一本まずはいれて「心理的に優位」にたったところで、ゆっくりと懐疑(疑って)してみる。
で、どこが、「アホ」なのか、と。
例でいえば、ピックアップしたのは、「インターネットをめぐる諸問題は、電話風俗をめぐって出尽くしている」という命題であった。
これに対して「ンナ、アホな」とツッコんだのであるから、「インターネットをめぐる諸問題は、電話風俗をめぐって出尽くしてい【ない】」点を指摘すればよい。
すなわち、「インターネットにおいては、電話風俗とは、異なった問題が生じている。たとえば、シティズン(ネティズン)(市民)的な運動がネット上で生じている。」とか
「インターネットにおいては、電話風俗とは、異なった問題が生じている。たとえば、ネット上では、電話風俗よりも、大きな頻度で、けんか(ネットケンカ)が生じやすい」とかである。
【アガリ!。主要命題=結論=イイタイコト=主要回答案のできあがり!!】
あーら、不思議、もうこれで、「主要命題=結論=イイタイコト=主要回答案」ができてしまったのである。
すなわち
【主要問題】インターネットをめぐる諸問題は、電話風俗をめぐって出尽くしているか?
【主要回答案=結論=主要命題=イイタイコト】出尽くしていない。
【問(自己へのツッコミ)】どこが出尽くしていないか。
【答え(ツッコミ返し)】ネティズン運動が生じている点である。
【問(ツッコミ返しへの、再ツッコミ)】どうしてインターネットでは、電話風俗と違って、ネティズン運動が生じているのか。
【答え(再ツッコミへの、再ツッコミ返し)】なぜなら・・・・・。
と、なるわけだ。
以下は上のような要領で、「自分へのツッコミ」→「ツッコミ返し」→「再ツッコミ」→「再ツッコミ返し」→・・・・・、を繰り返していくことで【論文構造設計表】(すん台文庫『論文ってどんな問題』参照)ができてしまう。
【一冊・一カ所だけピックアップして、ツッコむのがコツ】
以上の繰り返しになるが、コツを復習すると
1。まず、一冊・一カ所だけ、「ピックアップ」することがコツである。
人間の情報処理能力は意外に乏しいものである。それで、一つの命題だけを強引に抽出して、それに思考を集中させるわけだ。
2。考える前にツッコむ、のが第二のコツ。
「活字の威力」に飲み込まれないように、「考える前に、まずは、一本ツッコミをいれて」心理的余裕を確保しておく。
【その他の、注意点】
その他、卒論執筆上のこまごました注意点を述べておこう。
1。こまめに【バックアップ】、早めにプリントアウト。
現在においては、「バックアップを忘れるな」が【最重要助言】である。
2。アイデアがなくても、どんどん書き始めること。
人文科学の「論文」は、中身の半分以上は、他の文献への言及である。主要命題が決まっていなくても、パソコンの中に、何十枚分も打ち込んだ文章があるだけで、かなり心理的に余裕をもてるものである。また、他の文献への言及をかいているうちに自分の意見がでてくる場合も多い。【原則は、頭を使うより、手を使え】である。
3。メモは信用できない。どんどん「原稿化」すること。
おもしろいメモがあっても、いざ原稿化すると使いものにならないことが多い。「原稿」化していない思索は最終的には無に等しい。
4。三年生のうちに一回かいておくのが望ましい。
最近は就職活動が忙しく、四年生の時には研究時間が確保できない。三年生の時に一回卒論をかいておくのを強くおすすめする。
【その他のおすすめ、マニュアル】
・小林盾氏『ニコニコ卒論の書き方教室』 ・桜井芳生『卒論執筆のための、必要条件』『きらめくペーパーのために個人的意見』『論文ってどんなもんだい、はこう読め』『社会科学的貢献の手口』 以上桜井の研究室にあります。参考にしてください。