961202【ミームにとっての「天国」としての「永代供養ホームページ」】( 桜井研究所通信)

桜井芳生
sakurai.yoshio@nifty.ne.jp
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進化生物学者ドーキンスは、彼の利己的遺伝子論において、遺伝子と類似的な振 る舞いをする利己的文化的複製子ミームという概念を提起した。ドーキンス的に いえば、われわれ人間の身体(や、コンピュータネットワーク)は、流行や思想 や習慣や噂やコンピュータウイルスといった、「文化的複製子」の乗り物にすぎない のであろう。

961202右田(鹿児島大学学生)によると、生物の個体(たとえば人間)も、「遺 伝子的複製」に機能特化した者と、「文化的複製」に機能特化した者とに、大別 できる。後者をミーム重視の者としてミーマーを呼んでみよう。

961202いうまでもなく、ミーマーにとって、web空間は画期的である。とくに、 ある人の文化的複製子(思想や、芸術など)を、未来永劫にわたって、供給(サ ーブ)するサーバーがあれば、彼は、身体的制約(死)を越えて、文化的複製子 を複製するチャンスを得ることができる。これは、今までにないことだろう。

私(桜井)自身、アイムの「無料サーバー」にhpをおいている。アイムでは、 今後これを有料化しない、という。アイムがある限りは、私のページが私の思考 を複製サーブ(供給)し続けるだろう。

短期的には「ヴァーチャルお墓」が、多くの人にとって同様な機能を果たすだろ う。ある有限な対価でもって「永代供養」(無限時間におけるサーブ)を契約で きるとしよう。これは、ミーマーにとっては、「永遠の生命」いわば「天国」に 値するだろう。

961202短期的には、こうして「生きているうちからヴァーチャルお墓に自分の文 化的複製子の種をおく」人がでてくるだろう。

961202これまでの人間の文化は、「死者は、だんだんと忘却する」ことを前提に 成りたってきた。しかし、web空間では、この前提がはずれる可能性がある。

だとすると、1、死者を忘却することへの負い目がなくなる。2、ネットサーフ ァーにとっては、死者のページも生者のページも大差ない。この二点から、「お 墓」の概念自体も変化する(なくなる?)のかもしれない。

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