桜井芳生(著作権保持。2001年3月10日)
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【せっかくだから、大学のセンセイに、メールを出してみよう!】
インターネットがもたらして変化というものは、いろいろありますが、見ず知らずの大学(その他も含む)の先生に簡単にメールが出せるようになったということは大きな変化でしょう。本誌『エグゼクティブ』の読者のなかにも、大学のいろいろな先生のホームページをみて、メールを書いてみようかな、と、思った方も多いでしょう。せっかく新しく入手した「チャンス」です。ぜひ、関心のある大学の先生にメールを出してみましょう。しかし、おどかすわけではありませんが、コミュニケーションというものは取り返しがつきません。私(大学教員をしてます)のホームページをごらんになった方から、かなり多くのメールをいただきます。しかし、「こんなヤツとは、もう二度とつきあいたくない」と感じるようなメールもけっこうあります。本誌の読者の多くは大学院受験をかんがえていらっしゃるかもしれません。だとしたら、大学の先生に「嫌われる」のはとても不利なことです。というわけで、興味を持ったホームページの大学の先生にメールを書く際の注意事項を考えてみました。題して、大学の「センセイ」にメールを書く際に、「ころされない」ための注意事項、です。
【オトナを見たら、「ヤクザの親分」だとおもって、遇せよ!】
就活などのさいに指導している学生さんたちに必ず言う言葉があります。それは、「オトナを見たら、「ヤクザの親分」だとおもって、遇せよ!」ということです。ひとというものは自分のプライドに支えられて生きているものです。したがって、実社会においてひとと一緒にいきていこうとしたら、まずは相手のプライドを傷つけないようにすることが第一でしょう。こんなことはあたりまえですが、こと「ネット」になると相手との関係がまだ確定していないのに、気楽に「タメぐち」をつかうひとがいるようです。(わたしも見ず知らずの×応大学S×Cの学生さんからタメぐちメールをもらって不愉快な経験をしたことがあります)。とくに、大学の先生なんて、カネも名声もなくてプライドだけで生きているようなものです。
未知のオトナのプライドを気づけないためのアドバイスとして「ヤクザの親分のつもりで遇せよ」といっているわけです。ヤクザの親分ならアナタが「失礼」をすればあなたをころすかもしれません。しかし、アナタが「けなげ」に礼をつくせば「カワイイヤツ」としてひきたててくれるでしょう。他のオトナ(とくに大学の先生)も、同じようなものだとおもいます。本当に「ころす」ことはないでしょう。しかし、心のなかでは、「ドキュン」ところされています。アナタがそれに気づかないだけです。
くれぐれも「心のなかで、ドキュン」とされないように、「先生」という敬称と「敬語」は、あなたが「十分親しくなった」と感じたあとでも、使い続けるようにしましょう。
【「質問です」より、「ファンレター」】
未知の大学の先生にメールを書いてみたいという人はけっこういます。しかし、そのように人になんでメールを書いてみたいの?、と聞くと、いろいろ質問したいことがある、と答える場合が多いようです。しかし、じゃどんな質問なの?、と聞いても、要領を得ない場合がほとんです。私も未知の方から質問メールをもらいますが、一体なにを聞きたいのかわからないメールが少なくありません。聞く方はきっと「気楽」に聞いているのでしょう。しかし、こちらは、まがりなりとも「大学教員」です。「発言には責任」が生じます。不用意な発言はできません。また、質問者の「境遇」「質問の前提」などがメールでわからない場合がほとんどです。そのため、あたりさわりのない、すでにホームページにかいてあることと同趣旨のことを返事したり、「その件については、事務の方に聞いてください」と逃げてしまいます。
私の推測するところでは、多くの方はべつに明確な質問事項があるのではなくて、なんとなく「このセンセイ、おもしろそうだから知己(メル・トモ)になりたい」「この大学院の受験を考えているだが、入ってからの人間関係が心配だ。どんなセンセイなんだろう」というような場合がほとんどのような気がします。
だったら、「質問メール」ではなくて「ファンレター」にしちゃったらいいのではないでしょうか?。前述のように大学の先生なんてプライドだけを支えに生きています。とくに、気合いを入れたホームページを作っているセンセイたち(私のこと?)はマスコミで売れなくてサビシイ思いをしている人たちです。ですから、ファンレターが来るととてもうれしい。でも、「質問です」とかいったメールが来ると「しんどいナア」となってしまいます。
【「月並みなほめ言葉 + あなたの境遇」が、おすすめパタン】
では、どうしたら、「よい、ファンレター」が書けるか?。その先生のホームページをみてメールを出している以上、すこしは「おもしろい」とおもっているでしょう。しかし、「メール」を書くあなたには、それは「いうまでもない」ことにおもえて、「それ以上の違和感・同意できない部分」の方を、文面にしてしまいがちでしょう。しかし、メールをもらう方としては、その「おもしろいとおもっている」部分は伝わらなくて、「反論」の部分だけがつたわってしまい、「そんなに反感かんじているなら、じゃ読むなよ」とおもってしまいがちです。したがって、あなたにとってはいうまでもない部分の「おもしろかった」という感想をぜひ文面にのせましょう。
とはいえ、自分のポジティブな感覚は意外に言語化しにくいものです。そのような場合には、月並みに「おもしろかったです」「とても参考になりました」とのみのべて、さらに「あなたの境遇」をかくといいとおもいます。ホームページを持っていてメールをもらう方としては、いったいどんなヒトがこのページに興味をもってくれているのか、が、とても気になります。あなたの年齢・性別・所属・所在地・関心などが、書いてあるととても参考になります。これも、メールを書く方からすると「当たり前」すぎて盲点になるので、意識的に書くといいでしょう。というわけで「月並みなほめ言葉、+ あなたの境遇」がおすすめのファンレターのフォーマットです。(もちろん、以上は、メールを出す相手が「信用」できる場合だけです。電子メールにおいて、どんなヒトかわからない相手にたいして、自分の個人情報を開かすべきでないのは、いうまでもありません)。
【それでも、「質問」したい場合には】
それでもやはりどうしても質問したいという場合もあるかもしれません。その場合の注意事項を書いてみましょう。
1. 質問は箇条書きにする。あなたの境遇を明記する。質問文は、「YES・NO」で答えられるようにしておくのがベスト。
2. その先生のホームページ、あるいは他の公開情報上で、すでにわかることでないかを十分確認すること。
3. あなたの名前・電話番号を書くのが望ましい。大学教員のほとんどは、本名を公開しています。なのに、匿名・ハンドルネームの人からの質問に答える気になるでしょうか。また、返信メールで意をつくすのは意外にたいへんなものです。そんなときに、電話番号がかいてあると返答するほうからするととてもたすかります。見ず知らずの他人にものを聞こうとするのですから、「どんなチャンネルで返答するかは、相手の選択・便宜に任せる」というのが礼儀ではないでしょうか。
4. あなたが誰であるかなんていちいちおぼていません。メールでは「一回ごとに毎回」あなたのフルネーム・所属・連絡先と「先日、○○の件でメールを差し上げた××です。ありがとうございました」と書くべきでしょう。
【男からのメールは、歓迎されない。ウブな大学の先生を誘惑しないこと!】
私は男なので、女の先生はどうなのかはわかりません。が、いうまでもなく、「男の大学の先生」も「オトコ」です。やはり、女性からメールが来るとうれしいし、男性からメールをもらってもそれほどはうれしくありません。あなたが男性なら、「男からのメールはそれほどは歓迎されない」と知っておくべきでしょう。あなたが女性なら、その点有利です。が、ご注意ください。メールは、「恋文」に転化しやすいメディアです。何往復かメール交換をすると、向こうの(男の)先生の方が「燃えはじめる」ということが起こりがちです。女性の中にはおもしろがって、先生をもてあそぶ人もいるようです。どうか、ウブな大学教員を、誘惑しないようにおねがいします。
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