【主要命題】
1.少なくとも直近5年の「フリーター激増」の「過半」は「女フリーター」増加、による。
2.彼女らの大半は、 「むかしだったら、家事手伝い・OL」と分類されてような人たちかもしれない。
3.彼女らの大半は、「女30歳・(ネット)婚に、はしる?」かもしれない。
4.そのとき、「男フリーター」は、「伴走者」を失うだろう。
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001202みなさんこんにちは。桜井です。今日は、日本科学哲学会を聞きに、名古屋にきています。名古屋のホテルでこれをかいています。
私は科学哲学会の会員ではありませんが、松沢哲郎先生の講演と、内井惣一先生・長谷川真理子先生らによる進化心理学と社会科学についてのシンポジウムがあったもので、しろうと勉強ながら、やってきました。それらの中身については、機会があればべつにのべたいおもいます。今日書いてみたいのは、それとは関係なく、最近よく言及される「フリーター」現象についてです。
001202「フリーター」というと、学校をでても、定職につかず、コンビニなどでバイトをしている「ヤロー」をイメージするひとが多いと思います。
001202が、統計上は、近年(たとえば、直近5年)におけるフリーター「激増」の「過半数」を「女性」が占めている、のを、ごぞんじでしょうか?
(http://www2.mhlw.go.jp/info/hakusyo/000627/fig/fig43.htm より)
010107上のグラフの、92年から97年の変化をご覧下さい。これによると、非常に興味深いことがみてとれるでしょう。
それは、フリーターの増加といわれていますが、少なくとも過去五年に限っていると、「女性」のフリーターの増加のほうが、男性のフリーターの増加を大きくうわまわっている、ということです。
001203ここ最近日本社会におけるフリーターの増加について喧伝される場合おおいですが、
この「女フリーターの増加そこが、過去五年間のフリーター増加の大半を占めている」ということはあまり自覚されていないのではないでしょうか?。
001203では、その「女フリーター激増」の内実はどのようになっているのでしょうか?。
ご存じの方も多いと思いますが、最近のフリーターについてのもっとも実証的調査の一つとして、(労働省の外郭団体?)労働研究機構がおおこなった調査が有名です。
http://www.jil.go.jp/happyou/20000713_01_jil/20000713_01_jil_gaiyou.html
http://www.jil.go.jp/happyou/20000713_01_jil/20000713_01_jil.html (ご参照)。
001202これは、労働研究機構の出版物『フリーターの意識と実態』(日本労働研究機構 調査研究報告書 2000年 No。136)に、詳述されています。
001203この調査では、100人弱のフリーターにインタービューをおこなっています。ここでも注目されるのは、男とくらべて、女のほうが多い、ということです。
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男:34人。女:63人。(同報告書21頁) と、なっています。
001203そして、この調査は、フリーターを七つに類型してそれぞれの比率と含意を聞き取り調査によって、あきらかにしている(つもり)のようです。
001203ただし、この調査の「解釈」には大いに不満です。この調査も、上述の、常識のイメージのように、(分析者はすべて女性なのですが)なんとなく、「男フリーター」のイメージで解釈をしているようです。
001203その傍証として、かの機関の解釈では、とくに「女性のほうが多いということ」に、(自らのデータにあらわれていながらも)、自分では特に注目を喚起していません。
001203さて、解釈内容ですが、具体的にいうと、「1.離学モラトリアム(男のうちの29.4%:女のうちの30.2%、以下同様)」「2.離職モラトリアム(男11.8:女7.9)」「3.芸能志向型(男14.7:女17.5)」「4.職人・フリーランス志向型(男5.9:女14.3)」「5.正規雇用志向型(男14.7:女12.7)」「6.期間限定型(男17.6:女11.1)」「7.プライベート・トラブル型(男5.9:女6.3)」と、いうように、7分類しています。
001203が、ここから先は、私の推測になってしまうのですが、あらかじめ、分析者(解釈者)のほうで、この七つの分類イメージがあって、それを、強引に、現実のフリーター(とくに女フリーター)に、あてはめた(はっきりいってしまえば、押しつけた)感があります。
001203たとえば、それは、「3.芸能志向型(男14.7:女17.5)」「4.職人・フリーランス志向型(男5.9:女14.3)」という二つの類型に対してあてはまるとおもいます。
001203「貴女はなんのために今フリーターをしていますか」、とか、「将来の夢はありますか」、とか,聞かれれば、それほど明確な将来への志向がなかったとしても、「○○を将来の夢にしてフリーターをしています」とか「(将来のゆめはありますか)はい」と答えてしまうヒトがおおいのではないでしょうか。
001220実際に、この類型の女性の部分をみると、(27頁)(現在の関連活動)「バンド練習・ライブ予定中」→(夢が実現不可能な場合)「パソコン関連の専門学校に通って、その後就職したい」、「歌、先生について習っている」→(見切り上限)「別の道も考え中」→「やりたい仕事を見つけて正社員」、「ボイス・トレーニング、オーディション」→「歌は趣味にして、派遣会社で経験を積んで事務職」 などといった記述が目に付きます。
001203結論から言いましょう。労働研究機構の調査は、一次資料として非常に貴重だと考えます(本稿自体それに依拠いるのです)。が、それは、天下り的にフリーターの類型図式を現実のフリーターにあてはめてしまっている。しかも、それは、女フリーター激増現象に感受的でない、とおもいます。
001203そして、かの調査において、七つに分類されていた女フリーターのかなりの部分は、
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【以前であれば、「家事手伝いとして分類されたような人たちが、「自分の小遣いぐらいは自分でかせぐ(かせげ)」」となったようなひとたち】
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ならびに、【近過去においては、OLになった(なれた)ような人たちが「会社側のOL廃止政策」の結果、正社員になれかったというようなひとたち】
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ではないでしょうか。
001203つまり、結論を単純化して(強調して)述べてしまえば、
↓
日本の過去五年間における「フリーターの激増」現象のかなりの部分は、「女フリーターの激増」によってより、
↓
それは、【元・家事手伝い/OL】層(個々の各人が、「元・家事手伝い/OL」ということではなくて、昔だったら家事手伝い・OLになったような人たち、という意味)が、いまの「フルタイム労働者ではない小がね稼ぎをする境遇」へとシフトしたもの、ということがもっともありそうなストーリーでしょう。
001203だからといって、もちろん、「男フリーター」が増えていないなどとは、私はいうつもりはありません。
001203が、以上のように、少なくとも過去五年間直近のフリーター激増の内実が「大半が女」で、それが「家事手伝い・OL」からのシフトだとすると、通常「フリーター」日本としてイメージされるのとは、かなりちがっていることになるでしょう
001203さらに、「結婚」のことが問題になってくるでしょう。「晩婚」化と呼ばれていますが、私の観測では、女性のかなりの部分はあくまで「晩婚」するだけであって「一生非婚」組ではないとみとおしています(この点は、機会があれば、別稿でのべます)。
001203しかも、最近は、ネット婚が生起して、インターネット結婚相談所「Mermaid
Marriage」http://www.mermaid2.com/などをみると、「女・30歳になると、ネット婚に滑り込む」という現象がおきているようです(これも、機会があれば別にのべてみたいとおもいます))。
001203すくなくとも現在のネット婚では、女性はかなりの確率で男をみつけてしまうようです(男は、女をなかなかみつけられません。これに関しては、『ネットナンパ勝利の方程式』をごらんください)。
001203とすると、今「女フリーター」が激増していますが、何しろ「元・家事手伝い」「元・OL」ですから、30歳ごろには、(ネット婚をつかうかどうかはべつにして)、結婚(晩婚)してしまうことがかなりありそうなことでしょう。
001203一方、森永卓郎によると、男は5人に一人は結婚できないそうです。
001203ゼミなどでよく簡易アンケートをします。、「はい。みなさん。目をつぶってください。女性にのみうかがいます。相手(男)が一生フリーターでも、結婚してもいい、というヒト、手を挙げてください」というと、たいだい、手を挙げる女子大学生は、ゼロ人からせいぜい一割です。
001203すなわち、いま世間では、女フリーターが激増して、男フリーターも、「なんとなく、さびしくない」のでしょうが、彼の五年後・十年後には、「はしごをはずされる」というか、【伴走者(女フリーター)がいなくなる】ことになるわけです。
001203そうなったときに、彼「男フリーター」が、現在においてのように「ふしあわせを感ぜずに生きていく・被差別感を感ぜずにいきていく」のは、少しむずかしくなるのではないでしょうか?
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001202本稿は、鹿児島大学のある学生さんとのブレインストーミングに多くを負っています。感謝します。