三日で読める・文化科学のための【常識】・「最低」コース40ページ 941003
桜井芳生
sakurai.yoshio@nifty.ne.jp
http://member.nifty.ne.jp/ysakurai/
【もうチョット、【教養】があればなぁ・・・・】
学生さんたちと話したり、学生さんの書いたもの読んでみると、なかなかおもしろい発想
をするひとが多い。
ただ、惜しむらくは、「もうすこし、学問的な教養・常識があれば、もっとおもしろいも
のが書けるのに・・・・」と感じることが多いことだ。
これは、われわれ教育をする方のがわの責任でもあるが、大学の講義というものは、「タ
テ割り」になっていて、人文・社会科学においてだれでも知っていておいてほしいような
ことを、あらためて一つのカリキュラムとして教えにくいようになっている。
また、「教養・常識」に値することは、学生が自分で読むことが当然で、講義するにはな
じまないことも多い。
ところが、教員からすると「当然知っておくべき」ことも、学生の側からすると「何を知
っておくべきか」さえもわからないものだ。
生協などでは、「入門」「概論」と題されている本がいっぱいあるが、かならずしも「入
門」「概論」の全頁が重要というわけでもない。
というわけで、またまたおのれの浅学もかえりみず、「文化」を学問するうえで最低知っ
ておいてほしいようなことの「最短コース」の明示化を試みてみた。
ここでは、あえて拙速を貴び、一冊の本のなかでもとくに重要な「コノページだけ読め!
」を明示してみよう。
以下あげる文献はすべて、法文学部4 階の桜井の研究室にあります。だれでも閲覧・貸し
出しできます。
いつもどおり、私の好みがたいぶ反映している。「バランス」のとれたガイドではないこ
とを了承されたい。
【メディア論】
現代文化を探究するうえで、情報・コミュニケーション・メディアの視点が重要であるこ
とは論をまたないだろう。
しかし、世に流布している「情報」「コミュニケーション」「メディア」などと題された
本はつまらない本がおおくてこまってしまう。
とりあえず以下の二文献だけよめば、かなり「わかった気」がするのではないか。
○「メディア変容と電子の文化」( 13頁ぐらい、吉見俊哉、岩波『思想92年7 月号−情報
化と文化変容−』所収)
・マクルーハン『メディア論』のうちのp3〜34(みすず)
【社会学の古典家】
私自身社会学の出身だが、社会学というものはなかなか見通しがつけにくい学問だと思う
。
しかし、社会学のうちで「常識」として言及される部分は意外にすくない。何人かの理論
家の業績のあらましを知っているだけで、かなり「間に合って」しまうものだ。
社会学の古典家で知っておくべきなのはデュルケームとウェーバー(だけ?)である。
本は、実務教育出版の『公務員試験・社会学の要点整理』がとても見通しがよい、と思う
。( 東大大学院入試勉強の定番テキスト) 。
○「デュルケームの社会学」「ウェーバーの社会学」あわせて3 頁!( 『公務員試験・社
会学の要点整理』p10 〜13)
【現代社会学】
現代社会学の理論家としては、やはり【ルーマン】と【ブルデュー】が落とせないだろう
。
テキストとしては梓出版社の『社会のイメージ』がお手頃だろう。
○『社会のイメージ』、p132〜145 ( ルーマン) 、p178〜186 ( ブルデュー) 。
【精神分析】
フロイト由来の精神分析もあちこちで言及される。
これについては、フロイト自身がブリタニカ百科事典のために書いた解説がある。
○「精神分析」(8頁!)(フロイト『精神分析入門』角川文庫の付録)
最近よく言及される岸田秀の仕事をよんでみてもおもしろいかもしれない。
・「性差別は文化の基盤である」( 20頁ぐらい、『続・ものぐさ精神分析』中公文庫)
【( ポスト) 構造主義】
現代の文化科学において構造主義のインパクトを無視するのはむずかしい。
ところがなかなかよい入門書がない。
おこがましいが、ここでは、私が講義のために作ったレジュメを挙げておこう。
○「構造主義入門(その3)」(講義用のレジュメ。研究室にあります。)
【1頁の哲学史!】
教養の「最低」コースとしては必ずしも必要ではないが、とても短い哲学史を見つけたの
でここに紹介しよう。「もっとも短い哲学史」(宝島社、イラスト西洋哲学史・巻末付録
)、たったの1ページ!。
【たった、これだけ?】
「入門」レベルとしては、こんなもんではないだろうか。
意外に少ないでしょう。総計、約40頁( ○印のもの) です。
でも、世に流布している「教養・常識」も、ほんとうに重要な部分というのは、意外にコ
ンパクトなものなのかもしれない。
情報過多の現代において勉強の上手な人とは、重要な情報すなわち情報の「核=エッセン
ス」を見つけだして、それのマスターに精力を集中するのが上手い人のことであろう。
貴女も、この「最低」ラインをマスターすれば、そのへんの「4 年生」の「教養」レベル
を越えてしまうかもしれない?! 。
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