卒論執筆のための『必要条件』 950402-13
桜井芳生
sakurai.yoshio@nifty.ne.jp
http://member.nifty.ne.jp/ysakurai/
【大学生活の総決算として】
私は、大学教育において「卒業論文」というものを、【非常に】重視している。
極端にいえば、「いい卒論」さえかけば、他の講義などの「単位」などは関係なく「学位
」を授与していい、とさえ考えている。
貴女が、大学を卒業し「学士」の学位を得て、「知的な成人」として社会に巣立っていく
うえで「卒論」は大きなウェイトを占める、と私は考えている。
しかし、現状では、多くの人の卒論は読むに耐えないものだ。
もし、卒論がどうでもよいものだとしたら、大学は大学である必要はなく「専門学校」と
同じになってしまうのではないだろうか。
貴女も本稿を読んで、ぜひ貴女の大学4年間の「総決算」として、貴女の「青春の知的記
念碑」として、【人に誇れるような卒論】を書いて、大学を卒業していってほしい。
以下述べるような「卒論の要件」をみたしていないようなものは、卒業論文として私は「
認可」しない。したがって、とくに私桜井に、卒論を提出するつもりの人は、無事卒業で
きるように、以下を良く読んで「卒論に値する」ものを書いてください。
【早めに準備・早めに執筆】
全般的にいって学生さんは、お仕事の準備のとりかかりが遅すぎる傾向がある。
とにかくはやめに準備をすること。これだけで、大分事態は改善される。
目安としては、4年夏休み前までに、文献資料など調べるべきものはすべて入手すべきで
ある。
また、「読書・勉強」の途中でもどんどん原稿を書き始めるべきである。
そして、【夏休み中に第一稿を書き始め】て、夏休みの終わりには第一稿を書き終えてし
まうのが望ましい。
【形式的『必要条件』】
・「論文」の「定義」をみたしていること。
(桜井による「論文」の定義⇔(def) 「論文とはh「問題」を明確にし、iその問題に対
する「回答案=イイタイコト=結論=主要命題」を明確にし、jその「回答案=イイタイ
コト=結論=主要命題」を、「他者=読者」に対して論理的に説得する作業である」)
・先行研究・関連研究をできるかぎりフォローしていること。(目安としては、30冊位以
上はフォローしたい) 。
桜井研究室・大学図書館・公立図書館で閲覧できる文献は【すべて】閲覧すること(
「精
読」はしなくてもいいから) 。また『日本書籍総目録』を活用して、日本で出ている文献
は【網羅的に】フォローすること。
・枚数は50枚位以上(400字詰めに換算して) 。
・ワープロ書きが望ましい。
・文献指示、引用のルールなどを守ること( 詳しくは『知の技法』を参照せよ)。【剽窃
をしたら当然「不可」、すなわち「留年」】である。
【内容的『必要条件』】
・「問題」は明確になっているか?。
・「回答案=イイタイコト=結論=主要命題」は明確になっているか? 。
・そのテーマについて先行研究・関連研究を十分検討しているか?。
・直接つかえなくてもよいから、一つ以上は「理論」をマスターせよ。
・アンケートかインタビューなど、「調査」をおこなうことが強く望まれる。
・「テーマ」の選択については自由。
【必読文献】
・マクルーハン『メディア論』第一部
・桜井『きらめくペーパーのための個人的意見・総集編』『社会科学的貢献の手口』
・駿台文庫『論文ってどんなもんだい』、桜井『「論文ってどんなもんだい」はこう読め
』
・東大『知の技法』から「文献引用の仕方」など。
【「読んでから、考えてから、書く」のではなくて「書きながら、考え、読む」】
学生さんたちの一番の【誤解】は、「まずは十分文献などを読み、そして十分考えて、そ
れから書こう」という考えだ。これは間違った思い込みだ。
これでは、いつまでたっても執筆作業にはいれない。
( 創造的な) 「大人の仕事」は、じつはすべからく「見切り発車」であり「やっつけ仕事
」である。
文献の読書などは不十分であっても、とにかくアイデアの萌芽らしきものができたら、ど
んどん書き始めるべきである。
そして「書き」ながら、それこそ泥縄的に文献を読んだりすればよいのである。
また構想が十分に固まらなくてもどんどん書き始めるべきである。
書く前に考えた「構想」なぞといったものは、どんなに「練れた」構想のつもりでも、実
際に書き始めてみるとはじめの一ページ目で、崩壊してしまうかもしれないのだ。
とにかくはやめに書き始めること。そして「書き」ながら「勉強」し、「構想」をつくっ
ていくことをお薦めする。
【卒論は「二度」書け!】
私桜井は、ごぞんじのとおり、「論文」の書き方についてつねづねいろいろと「ノウハウ
」を教示している。
また自分自身の論文執筆法・発想法も公開するように心掛けている。
しかし、誤解してほしくないのだが、いくら桜井が「論文の書き方」ついて講義したとこ
ろで、ホントのところは、【実際に論文は書いてみなければ、論文の書き方はわからない
】ものなのである。( そう、思いませんか? 。鮫島さん!) 。
ところが、この点を【甘く見ている】学生さんが多いような気がする。
「ある程度資料などをあつめておけば、最後の一ヵ月( 一週間?)でなんとかなる」と、思
っている学生さんが多いような気がする。
しかしこれは間違いだ。【なんとか】ならないよ!。
というわけで、「論文処女」の学生さんたちには、【卒論は二度書く】つもりでお仕事を
しろ、と、言いたい。
読書や調査や思索は不十分でもいいから、夏休み中ぐらいには「第一稿」を書き上げるよ
うにしてほしい。
こうして「第一稿」を書いてみてはじめて「どこがたりない」のかがわかるものなのであ
る。
【こまめにバックアップ、早めにプリントアウト】
卒論執筆においては、「ワープロ( パソコン) 」を使うことをお勧めするのはいうまでも
ない。
ただ、ワープロをつかう際には、手書きにはない注意がいくつか必要である。
第一は「バックアップの必要性」である。
たった一枚のフロッピーがクラッシュすることで、貴女の数カ月の努力が全く水泡に帰す
危険性がある。
かならずバックアップフロッピーを作って、【こまめにこまめにバックアップ】をとる習
慣をつけよう。
第二は「プリントアウトに意外に時間がかかる」ということである。
また、慌てて徹夜でプリントアウトしていると、「リボンや紙がなくなる」ことがよくあ
る。
あるいは、最悪の場合、急いでいる時ほど「プリンターが故障する」ことがある。
これに対する決定的対策はない。心掛けとしては、「早め早めにプリントアウト」し、「
紙やリボンは多めに準備」することしかないだろう。
プリントアウトについてはぎりぎりの予定をたてずに2 〜3 日の余裕をみておくことが必
要だろう。
【アイデアをどうして得るか? 】
どんなテーマでも1 〜2 カ月集中的に勉強してみると、大体の輪郭というか、「知的最前
線」とでもいったようなものがどのようになっているかみえてくるものだ。
そして、何十冊もある文献のうちで、「核」となるような文献は、じつは意外に少ないこ
とがわかるだろう。
そうしたら、そのような「核」となるような少数の文献に集中的に再度アタックするとい
いだろう。
冊数は多くする必要はない。貴女の好みに応じて1 〜3 冊程度を、このような「精読┤集
中的検討」に値する文献として選ぶといいだろう。
すると、どうしても貴女が【納得できない】ような箇所にぶつかるはずだ
ここが「問題」だ。この箇所を何時間も何日も考え込んでみよう。
すると、あるとき、偉そうなことを言っていた( その文献) の著者がけっこういい加減な
ことを言っていたことがわかる。
われわれはついつい「本」に書いてあることは「真理」だとおもいこんでしまうが、そん
なことはない。
「本」に書いてあることも「生身の人間」が書いたことだ。「間違い」だらけである。
こうして貴女が発見した、核になる文献の「間違い」に対して、貴女の代替案をかんがえ
ればよい。
これでもう論文の「アイデア」( =イイタイコト=結論=主要命題=回答案) はできてし
まったわけだ。
桜井のホームページにもどる