桜井芳生
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【主要問題】レイプが排卵を誘発するという生理を説明せよ。
【主要回答案】この生理は、男のレイプ本能との「共進化」の産物である。
961220オーガズムによって受精確率が高まるという知見には大きく啓発された (御教示くださったO氏に感謝します)。が、「強姦されて妊娠する例が意外に 多い」「暴行による性交ショックが排卵の引き金になるものと思われる。」(8 28頁、イミダス97。大島清による)という知見にはさらにショックを受け た。
961220もしこれが事実だとすると、非常に大きな「学問的問題」「知的パズル」 が提起されるだろう。すなわち、以下のような【「レイプ→排卵」問題のパズ ル】である。
【「レイプ→排卵」問題のパズル】レイプが排卵を誘発し、その結果受精確率が 高まるという事象が、なぜ存在しているか、説明せよ。
961220このパズルに対する回答案はいくつかあり得るかも知れない。しかし、実 は正直にいうと、いまの私には以下のような回答案「一つ」しかおもいつかな い。そして、おそらくこの回答案以外にないのではないか、という悲しい直感的 見通しを持っている。
961220私のいま持っている悲しい回答案とは、つぎのような仮説である。
すなわち、人間の男(の少なくともある一定割合)には、レイプの本能がある。 そして、そのレイプ本能には「進化論的根拠」がある(これは、レイプ本能と、 ダーウィン主義をともに仮定すれば、ほぼ自動的に帰結するだろう)。
そして、【レイプによって排卵が誘発されるという生理は、この男のレイプ本能 との、「共進化」の産物である】。誤解を警戒しつつあえて直感的に直裁にいえ ば、レイプによって排卵が誘発されるという女の側の生理は、男のレイプ本能に 対していわば「相乗りし、助長する」仕掛けである。というものである。
961220説明しよう。私は前に、オーガズムの際に受精確率が高まるということに ついて以下のように考えた。人類はその歴史の大部分においても「女の交換シス テム=婚姻制度」をとっていた(エンゲルス的な原始乱婚仮説の否定)。しか し、配偶者の選択の余地のないシステムは進化論的には性能が悪い。それで、そ の人類史の大部分のおいても婚姻外性交渉ならびにそれによる受精がかなりあっ たと推測した。そして、オーガズムとは、このような婚姻外性交渉を女に誘因つ ける仕掛けである、と仮説した。
じつは、男のレイプ本能とは、このような女のオーガズムと同じような機能を果 たしている(ものの一つ)のではないだろうか。婚姻制度を前提としつつ、婚姻 外性交を誘因づける仕掛け(の一つ)が、レイプ本能ではないか。すなわち、オ ーガズムの生理とレイプ本能とは、婚姻外性交を生起させるという点で「機能的 に等価」である。(これには、「婚姻前の女性も高頻度でレイプされる点が説明 できない」という反論があり得る。しかしいうまでもなく「近代社会」以外で は、「ねえやは、十五で嫁にいく」のがふつうであろう。人類史の大部分のおい てはレイプの被害女性は、「既婚」であった可能性が高いだろう)。
さてここに、レイプ衝動の高い遺伝子と、比較的低い遺伝子があったとしよう。 他の条件がまったく同じであったとすると、レイプ衝動の高い遺伝子の方が、複 製力が高いのはいうまでもない。(「低い遺伝子」の持ち主よりも、「高い遺伝 子」の持ち主の方が、婚姻外を含む性交の対象者・相手が多くなるから)。
【とすれば、女の側の遺伝子複製戦略からしても、レイプ衝動の高い遺伝子と 「相乗り」した方が得策となる】。
いいかえれば、「レイプされた際に妊娠確率の高い遺伝子」と「レイプされた際
に、妊娠確率が低い遺伝子」があったとすると、【前者の方が、進化論的にいえ
ば有利】になるのである。そしていうまでなく、「レイプされた際に妊娠確率の
高い遺伝子」が競争に勝利すること自体がまた、男の側でのレイプ衝動の高い遺
伝子の自己複製に有利に働くのである(レイプ妊娠生理による、レイプ本能の助
長)。
【970205の追記!】
先日本屋で立ち読みをしていたら、竹内久美子氏が、本稿とほとんど同主旨の議論をしていた。本稿の議論に関して私桜井は、プライオリティー(先取権)を主張しない。