東大大学院Aさんの、シカゴ大学進学記990515
 
 

桜井(鹿児島大現代メディア文化)です。こんにちは。
この度、シカゴ大学大学院博士課程にご進学されることになったAさんに、ご無理を
おねがいして、受験?体験記をかいていただきました。

紹介いたします。非常に貴重な情報をご提供くださったAさん(all rights reserved)
に、深謝いたします。

★ときどき「Aさん」という表記をつかわせていただいていますが、
【すべて別人】(正確には、同一人物とはかぎりません)です。
どうぞ、おまちがえのないように、おねがいいたします!!。★

                 桜井芳生
                                     sakurai.yoshio@nifty.ne.jp
                 http://member.nifty.ne.jp/ysakurai/

(以下引用)

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 今年の秋学期から,シカゴ大学の社会学科の博士課程に留学することになり
ました。他の方に参考になるかと思い,入学の許可を得るまでの体験をまとめ
てみます。
 

1 経緯

 まず,これまでの経緯を振り返ってみますと,いつかは数理社会学の本場で
あるアメリカに留学してみたいと漠然と考えていましたが,昨年の夏に国際学
会に参加したことから急に留学を真剣に検討し始めました。国際社会学会で報
告した時に,口頭であれ文書であれ「英語で表現する」ことの大切さを痛感し
ました。また,学会で知り合った方々に,大学と大学院を通して東京大学で勉
強してきたことを話したら,「なぜ留学しないで日本にいるのか」と不思議に
思われて,留学を強く勧められました。

 その学会の帰り際,スタンフォード大に寄った時に何人かの先生と院生に,
また帰国後は留学経験のある何人かの先生に,留学について相談しました。す
ると,リサーチフェロー(研究生)として行くよりも,正規の博士課程に入学
して博士号を取得するべきだと,例外なく皆が勧めました。また,シカゴ大で
社会学を教えている日本人の先生が9月に日本に来た時に相談したところ,私
の研究テーマであれば,シカゴ大,スタンフォード大,オランダの社会科学大
学院大学(Interuniversity Center for Social Theory and
methodology)が相応しいだろうとのことでした。

 そこで,9月以降はこの3つの大学院を念頭に置いて準備を始め,12月末に願
書を提出して,3月始めまでに結果を受け取りました。まず,9月に願書を請求
しましたら,1カ月程で届きました。次に,アメリカの大学院で要求される
TOEFL(Test Of English as Foreign Language)を10月に,GRE
(Graduate Record Examinations)を11月に受けました。最後に12月の末
に,志望の動機を書いたエッセーや成績証明書などと共に,願書を出願しまし
た(シカゴ大とスタンフォード大のみ)。シカゴ大からは2月半ばに,スタン
フォード大からは3月始めに通知が郵送されてきました。この時点で第一志望
であったシカゴ大に合格したので,6月が締め切りだったオランダの大学院に
は出願しませんでした。
 

2 留学について

 次に,留学することの意味を考えてみたいと思います。私の場合は,研究
テーマが日本やアジアを対象としているわけではないため,特に日本で研究を
する必要がありませんでした。むしろ,アメリカで研究が進んでおり,主要雑
誌も英語ですので,アメリカで勉強することが役立ちそうです。

 また,今後英語で研究成果を発表していくには,英語の能力を身につけるこ
とと,英語圏の研究者集団に入ることが大切だと思いました。英語は,英語圏
の人とコミュニケーションするためだけでなく,むしろ非英語圏の人と意志の
疎通をはかる時に,デファクトスタンダードとなっているようです。

 留学先を決めるには,US News and World Report という雑誌の増刊号で
ある Best Graduate Schools が役立つかも知れません
(http://www.usnews.com でも見れます)。アメリカでは,大学院のランキ
ングが広く認知されているようです(シカゴ大は社会学で2位,スタンフォー
ド大は7位でした)。

 ところで,英語能力に関しては,私が勉強している社会学では日本にいる限
り「英語文献を読める」ことだけが必要とされています。しかし,国際学会で
報告したり,アジアを含む海外の友人と交流していると,自分の研究や考えを
英語で「表現」することが大切だと,つくづく思います。

 この英語表現の重要性はよく指摘されていますが,ようやく最近になって実
感できました。私がこれまで中学・高校・大学・大学院を通して得た英語の能
力とは,研究を進める上でも外国人とコミュニケートする上でも必要な程度の
うち,10分の1位だと思います。
 
 

3 準備

 最後に,アメリカの大学院から入学の許可を得るために必要なことを,自分
なりに整理してみたいと思います。アメリカへの留学に必要な手続きは,『ア
メリカ大学院留学』に詳しく載っています。また日米
教育委員会に行けば,アメリカの大学院の資料が多数揃っ
ています。

(1) 早めの準備

 まずは,留学を計画しているのであれば,早めに準備にとりかかると良いと
思います。私の場合は入学の1年前に思い立ったのですが,これは例外的に遅
いスタートだったため,余裕がなく苦労しました。多くの方は,入学の2年前
から TOEFL や GRE を受験し,また各種の奨学金に応募しているようです。

(2) アドバイザー候補に連絡を取る

 意外なことに,欧米の大学院入試は日本よりコネ重視です。TOEFL や GRE
といった客観的な指標は「足切り」に使うだけで,合否を決めるのはアドバイ
ザー(指導教官)となる人が自分を引いてくれるかどうかのようです。ですか
ら,どの大学院に行くかを決める時には,同時にアドバイザーを決めて,こち
らからアドバイザーになってくれるよう連絡する必要があります。

 私の場合は,シカゴ大の先生が既に私の研究を詳しく知っていたため,この
手間が省けました。スタンフォード大には夏に立ち寄った時に2人の先生にお
会いし,オランダの大学院大学の先生とは国際社会学会で何人かに留学の相談
に乗ってもらいました。

 また,日本人留学生の知り合いがいれば,留学先の事情を詳しく聞くことが
できます。私は,スタンフォード大や UCLA の先輩によくメイルで質問をし
ました。

(3) TOEFL

 TOEFL は外国人の英語能力を試す試験で,アメリカの大学院では必ず課さ
れますから,早めに何度も受験すると良いと思います(試験については
http://toefl.org を参照)。「リスニング」と「文法」と「長文読解」か
らなり,680点満点で,550点から600点位が足切りのラインのようです。私を
含めた多くの日本人は,文法と長文読解で点を稼ぐのですが,リスニングで苦
労するようです。

 なお,TOEFL の出題形式はかなり独特ですので,慣れが必要です。テスト
の点数は自分で送りたいものだけ大学院に送れば良いので,毎月受けると良い
と思います。試験の申し込みには,Information Bulletin という冊子を入
手します(ノヴァなどの英会話学校で入手できます)。

 対策としては,参考書がたくさんありますが,まずは TOEFL の実施機関が
出している TOEFL Test Preparetion Kit がお勧めです(。その他の教材でも,テープ付きが望ましいと思
います(参考:『TOEFL 教材ランキング』主婦の友社)。また,予備校も多
数ありますので,ペースメーカーとして通うことも役立つと思います。私は駿
台に最初通い,同時にトフルアカデミー
にも行きました。模試もできるだけ受けました。

(4) GRE

 GRE は,アメリカ人も含めて大学院受験者に必ず課されます。Verbal(英
語),Quantitative(数学),Analytical(推理)に分かれ,各800点満点
で合計2400点です。現在日本では,全てコンピュータで受験します(シルヴァ
ンプロメトリック に電話で申し込みます)。数学は中学程度
でほぼ満点が取れますし,推理も慣れさえすれば高得点が狙えます。ただ,英
語はアメリカ人にも課されるだけあって,かなり高度で正直言ってお手上げで
した(例えば,ある単語と反対の意味の単語を5つの選択肢から選ぶ時,元の
単語も選択肢の単語も全て初めて見るものだったことがあります)。

 なおTOELF と異なり,GRE では受験した結果が全て大学院に強制的に送ら
れますし,点数は複数回受けていれば平均点が審査されます(TOEFL では最
高点が審査されます)。これは、 GRE が大学卒業時点での学力を調べること
を目的としているため,その後の点数アップは認めないという考え方を採るた
めだそうです。ただ,受験をしても,最後にキャンセルボタンを押して点数を
見なければ,その回は点数が送られません。ですから,私は何度か受験してみ
て,自信のある時だけ点数を見ることにしました。

 対策としては,やはり GRE の実施機関(TOEFL の実施機関と同じ)が出し
ている CD-ROM が役立つと思います。予
備校には通いませんでした。

(5) エッセー,奨学金

 その他に,志望の動機を1?2ページにまとめたエッセー(Statement of
Purpose)と,大学・大学院の英文の成績証明書を提出します。また,3人か
らの英文の推薦書が求められます。いずれも時間がかかるものですので,遅く
とも提出の3か月前から準備すると良いと思います。

 また,アメリカの私立の大学院は授業料が高いので,渡米前に奨学金を得て
いると大分楽になると思います。授業料が年間で300万円位かかり,その他に
生活費や研究費が必要ですので,多くの留学生はロータリーやフルブライトな
どの留学生向け奨学金に応募しているようです。これらの多くは,入学の1年
半前位に締め切りがあります(例えば2000年9月に入学するための応募が,今
年の6月に締め切られます)。

(引用終わり)
 

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